東京高等裁判所 昭和28年(う)1978号 判決
被告人 林理三郎
〔抄 録〕
論旨第一点乃至第四点に対して。
原判決挙示の証拠によると、被告人が原判示の期間群馬県利根郡赤城根村村長の職にあつて、同村が昭和二四年五月中旬頃関東信越財務部長から昭和二三年度地方公共団体事業資金として同村災害土木復旧事業費に充てる為借入れた金三〇〇万円を保管中、昭和二四年一二月頃肩書自宅で右金員の中から金二〇万円を擅に同村大字輪組津久井忠吉に貸付ける契約をなし、その頃同郡沼田町所在群馬大同銀行で手渡したことを認め得るが特に借用証一通(乙第三号証)、当審証人津久井忠吉同鈴木葛吉の各証人尋問調書の記載によれば、被告人は赤城根村長の職にあつて同村の事務を管理執行していた者であるが、昭和二四年一二月頃肩書自宅で同村大字輪組部落代表津久井忠吉等から同部落四五戸の肥料購入代金に充てる為貸与せられ度い旨懇請されて承諾し、右部落民の利益をはかる目的で当時自ら保管中の同村の前記借入金の中から金二〇万円を同村会の決議等正規の手続を経ることなく擅に、その頃前記群馬大同銀行で、同村の名義をもつて右津久井忠吉に貸与して同村にその損害を加えたものであることが推認できる。(尤も右の認定をする為には訴因変更の手続を必要とすること勿論である。)そうであれば右被告人の所為は横領の罪ではなく背任の罪にあたるものであるから、原審がこれについて横領の所為を認定して同罪の規定を適用したことは事実の認定及び法律の適用を誤つたもので、右の誤は判決に影響を及ぼすことが明らかであると謂はなければならない。原判決はこの点において、他の論旨(量刑不当の論旨)に対する判決を俟つまでもなく、破棄を免れない。論旨は理由がある。